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ノーザンブロット法(RNA8)
目的とする微量なRNAを検出する一般的な方法である。
RNAを扱うのでRNaseに注意することが重要である。
遺伝子の発現量が少ない場合には、検出が難しくなりサンプルの量が多く必要となる。
通常全RNA20μl程度を用いる。
電気泳動後のゲルの観察には通常EtBrが用いられて来たが、ホルムアルデヒドを除去する操作が必要になる。
今回はこのような操作の不要なRadiant Red(Bio-Rad)用いてゲルを染色する。
検出には通常RIで標識したプローブを用いて、ハイブリダイゼーションを行う。
ハイブリダイゼーションはサザーンブロットと同様の方法で行うことができる。
今回は、電気泳動とブロティングまでを行い、プローブの作成、ハイブリダイゼーションは省略する。
(1)ホルムアルデヒド変性アガロースゲル電気泳動
準備
- 10xMOPS 溶液(0.4 M MOPS(MW.202.26)、0.1 M Na Acetate(MW136.08)、10 mM EDTA pH 7.0):
40.4 g の MOPS、6.8 g の Na AcetateにRNA用の水を400 ml加え 撹拌し溶解する。
10N NaOHでpHを7にする。
10 ml の0.5 M EDTAを加える。
水を加え最終的に500 mlにする。 - Gel-loading 溶液( 50 % glycerol、1 mM EDTA、0.25% bromophenol blue):
10 mlのプラスチック試験管に5mlのグリセロールを加える。
20μlの0.5M EDTAと25mgのBPBを加える。RNA用の水を加え10mlにする。 - 滅菌済みミリQ水(またはDEPC処理水):200ml
- 1xMOPS溶液(1L):
10x溶液をミリQ水で希釈する。ミリQ水は、滅菌していなくてもよい。 - ホルムアルデヒド(Formaldehyde)
- ホルムアミド(Formamide)
- 20xSSC:
1Lのビーカーに塩化ナトリウム175.3g、Torisodium Citrate88.2gを計り取り、800mlのミリQ水を加える。
NaOHでpHを7.0に調整する。 - アガロース
方法
- ゲルの作成
- 1.2gのアガロース(1%,120ml)に87mlの滅菌蒸留水(またはDEPC処理水)を加え、電子レンジでよく溶かす。
- 約60℃に冷ました後、12mlの10xMOPSと22mlのホルムアルデヒドを加え、準備したゲルキャストに流し込み冷えるまで待つ。(この操作は換気の良いところで行う)
- 電気泳動装置に1xMOPS溶液(1l程度)を入れ、固まったゲルをゆっくり沈める。
- サンプルの作成と電気泳動
- 以下を0.5mlチューブに加える。そのエッペンドルフチューブに以下の物を加え、溶解する。
- 65℃で 15分間熱する。
- 氷中で冷却し、2μlのgel-loading 溶液を加える。
- 資料溝にサンプル(20μl)を入れる。
- 電極は、サンプル側を – にし、20-30Vで一昼夜電気泳動する(または100Vで2-4時間)。(BPBがゲルの下端から1/3程度のところまで。)
- ゲルの観察
- 1×MOPS buffer 200mlにRadiant Redを200μl加える。
- 電気泳動後のゲルを1の染色液につけ、30分間放置する。
- 254nmまたは302nmの紫外線で観察する。(デンシトグラフ)
RNA(20μg) | 5.5μl |
10xMOPS | 1.0μl |
Formamide | 10.0μl |
Formaldehyde | 3.5μl |
(2)ブロッティング
- ナイロンメンブラン(ハイボンドN+)、濾紙を適当な大きさに切る。不必要なゲルを切りおとしておくと良い。
- ナイロンメンブランは最初蒸留水に5分程度浸し、その後20XSSCに5分以上つけておいたものを用いる。
- ゲルは20XSSCに20分間程度つけておく(省略することも可能)。
- 下記の図に従ってブロティングする。(バキュームブロッターなどを用いると時間を短縮できる。トランスファー溶液は20xSSCを用い1晩行う。
- トランスファーした後、メンブランにボールペンで目印を付け、ゲルを除く。
- UV-cross link(または80℃1-2時間ベーキング)を行う。
(行う前にメンブランを洗浄するとRNAがはがれることがあるので注意する) - メンブランを2 x SSCで5-10分間程度静かにすすぎ、アガロース片を除く。UVクロスリンカーでDNAをメンブランに結合させる。メンブランを乾燥させ、ハイブリバッグに入れ(短期間であれば濾紙にはさんで)保存する。
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プローブの作成、ハイブリダイゼーション、オートラジオグラフィーは本実習では省略する。
(3)ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションには、塩濃度と反応温度に関係がある。
一般的には1M程度のNaClの塩濃度がよく用いられる(例えば:6×SSCまたは6×SSPE)。
変性剤であるFormamideを50%程度用いる時には42℃の反応温度が一般的である。
Formamideを用いない時には65℃の反応温度がよく用いられる。
ハイブリダイゼーションによく用いられるナイロンメンブランは核酸の吸着性が強いために、反応液中に非特異的な吸着を阻害する工夫が必要になる。
Denhardt溶液がよく用いられるが、skim milkやHeparinが用いられることもある。
また、salmon spermaやhering spermaのDNAを用いるのも効果的である。
ハイブリダイゼーションの高率を高めるためには、Dextran sulfateやpolyethelen glycolを用いると良い。
最近では、短時間で強いシグナルを得ることができるハイブリダイゼーション液が市販されてきている。
今回はこの1つであるPerfectHyb Hybridization Solution(TOYOBO)を用いる。
準備
- 20XSSC:
175.3 g NaCl, 88.2 g Trisodium citrateを蒸留水に溶解し1l にする。
pHを塩酸(1N以下を使う)で7.0にする。 - 10% SDS:
50 gをとり蒸留水500 mlに溶解する。フィルター滅菌。 - PerfectHyb Hybridization Solution(TOYOBO)
方法
(PerfectHyb Hybridization Solution)を用いる方法
*すべてRI実験室で行う。前もってPerfectHybは68℃に加温しておく。
- プレハイブリダイゼーション
- ブロッティングしたナイロンメンブランをタッパー(または専用のガラスチューブ)の中にいれ、小量のPerfectHyb(100cm2で5ml以上)に浸す。
- 68℃で20分間以上置く(軽く揺すってもよい)。
- ハイブリダイゼーション
- 予め68℃にあたためたPerfectHyb10mlを50mlのファルコンチューブにとり、レベルされたプローブを加える。10mlのハイブリダイゼーション用のPerfectHybに10ng-100ngのプローブを使う(または1-2×106cpm/ml)。
- 専用ガラスチューブでプレハイブリダイゼーションのPerfectHybを捨て、プローブの入ったハイブリダイゼーション用のPerfectHybを加える。または、ナイロンバッグにメンブランを移し、そのナイロンバッグにハイブリダイゼーション溶液を加える。この時にポリシーラーを用いる。ポリシーラーがRIに汚染されないよう注意工夫する。
- 68℃で1時間から一晩おく。(実習では2時間以上)
- ナイロン膜の洗浄
- 小量(20mlから50ml程度)の2xSSC、0.1%SDSに、ハイブリダイゼーションの終わったナイロンメンブランを入れ、68℃で5分間洗浄する。これを2回繰り返す。使用したWashingの溶液は、32P廃液として回収する。
- 大量の(200-500ml)0.1xSSC、0.1%SDSで68℃で15分間洗浄する。これを2回繰り返す。
- ナイロン膜をガイガーカウンターで調べ、カウントが落ちたことを確認。
- 濾紙上に広げ、水を切り、完全に乾燥させる。
- オートラジオグラフィー
- ナイロンメンブランを2枚のサランラップに挟み、インテンシファイスクリーンについたカセットにいれ-80℃でオートラジオグラフィーを行う。
- 今回は、モレキュラーイメージャーを用いてオートラジオグラフィーを行う。
あらかじめ、洗浄用の溶液は68℃に保温しておく。