目次


1. PCR産物の精製

PCR産物は、電気泳動で確認し 1本のバンドで非特異的なバンドがない時はカラムでPCRプライマーとバッファーを除いて後の反応に用いることができるPCR産物に非特異的な複数のバンドが見られる時には、そのバンドをゲルから切り出し、DNAを精製してシークエンスの反応に用いる。


PCR産物が1本のバンドの時
  • マルチスクリーンPCRフィルタープレートを用いる方法
準備
  • マルチスクリーンPCRプレート(Millipore)
  • マルチスクリーンバキュームマニホールド(Millipore)
  • 吸引加圧用ポンプ

操作

1. PCR産物をマルチスクリーンPCRフィルターに入れる(最大300μlまで)

2. マルチスクリーンバキュームマニホールドで10分間またはウエルが空になるまで吸引(8 inch Hgの圧を越えないように)

3. 50μl(または100μl)の滅菌蒸留水を加え、5-10分間シェーカーで撹拌する 

4. プレートのウエル内のPCR産物を回収する

 

  • QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いる方法

本キットでは、使用前にBuffer PEにエタノールを加える。すべてのステップの遠心は10,000g(卓上型遠心機で12,000-15,000rpm)以上、室温で行う。

操作

1. PCRの溶液に5倍量のBuffer PBを加える(10μlに50μlの割合)。(この時に、ミネラルオイルを除去する必要はなし。)

2. QIAquickカラムを添付の2mlのチューブの上におく。

3. 1.のサンプルを2.のカラムの上に乗せ、30-60秒間遠心する。

4. 下のチューブに出てきた溶液を捨て、再び同じカラムを同じチューブに乗せる。

5. 750μlのBuffer PEをカラムに入れ、30-60秒間遠心する。

6. 下のチューブに出てきた溶液を捨て、再び同じカラムを同じチューブに乗せ、さらに1分間遠心する。

7. カラムを新しい1.5mlのエッペンドルフチューブに乗せる。

8. カラムにBuffer EBを50μl加え、1分間遠心する。(DNA濃度を高くする時には、30μlのBuffer EBを加え、1分間静置した後に遠心する。)

9. エッペンドルフ溶液の中にPCR産物が抽出されている。


アガロースゲルからDNAを回収する場合

  • QIAquick Gel Extraction Kitを用いる方法

PCR産物が複数のバンドになる時には、アガロースゲルから目的のバンドを切り出し、DNAを回収する。今回はQIAquick Gel Extraction Kitを用いる。このキットでは、使用前にBuffer PEにエタノールを加える。すべてのステップの遠心は10,000g(卓上型遠心機で12,000-15,000rpm)以上、室温で行う。

50℃の恒温槽を用意しておく。

 

操作

1. 目的のバンドをゲルから切り取る(できるだけ小さく)

2. 予め重さをはかっておいたエッペンドルフチューブにゲルをいれ、ゲルの重さをはかり、3 volumeのBuffer QGをゲルに加える(100mgのゲルに300μlのBuffer QGの割合)。

3. 50℃の恒温槽で、ゲルが完全に溶解するまで、10分間インキュベートする。溶けにくい場合は、2-3分ごとにボルテックスをかける。

4. 完全にゲルが溶解した段階で、溶液の色が黄色であることを確認しておく(Buffer QGと同じ色)。もし、オレンジか赤色の場合は3M Sodium Acetate(pH5.0または5.5)を10μl加え、色が黄色になること確認する。

5. 1 volumeのイソプロパノールを加え、混ぜる。(100mgのゲルに100μlの割合)

6. QIAquickカラムを添付の2mlのチューブの上に置く。

7. 5.のサンプルを6.のカラムの上に乗せ、1分間遠心する。(この時、サンプルのvolumeが800μlを超える場合は一度にカラムに乗らないので、遠心後に再び、カラムにサンプルを乗せ遠心を繰り返す。)

8. 下のチューブに出てきた溶液を捨て、再び同じカラムを同じチューブに乗せる。

9. (optional:direct sequencingなどの時のみ)0.5mlのBuffer QGをカラムに乗せ1分間遠心する。

10. 750μlのBuffer PEをカラムに入れ、1分間遠心する(もし、塩濃度が重要な実験(blunt end ligation, direct sequencingなど)の場合はBufferを乗せて2-5分間静置し、それから遠心する)

11. 下のチューブに出てきた溶液を捨て、再び同じカラムを同じチューブに乗せ、さらに1分間遠心する。

12. カラムを新しい1.5mlのエッペンドルフチューブに乗せる

13. カラムにBuffer EBを50μl加え、1分間遠心する。

14. エッペンドルフ溶液の中にDNAが抽出されている。

 

  • Ultrafree-DAスピンカラム(Millipore)を用いる方法

ゲルからのPCR産物の精製がより早く、簡便にできるキットもある。
本キットはゲルを破砕して直接PCR産物を回収するので遠心機があれば10分程度で作業が終了する。
カラムはPCR産物の大きさが100-10000bp程度の範囲で、1.25% アガロース/1×TAE bufferを使用した場合に最適化されているが、ゲル濃度が高い場合、遠心機の回転数を上げることで使用可能である。また、TBE bufferを用いた場合でも、PCR産物が多ければシークエンス反応にそのまま用いることが可能である。今回は1.25% アガロース/TAE bufferからの切り出しを例として紹介する。

 

操作

1. 目的のバンドをゲルから切り取る(100mg以下)

2. ゲルをカラムに入れ、5000xg(7000rpm)、10分間遠心する。

3. エッペンドルフ溶液の中にDNAが抽出されている。(カラムは捨てる。)

 

2. シークエンス反応

今回シークエンスの反応はBig Dye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction(ABI社) を用いる。このキットの原理はサンガー法で、DNAポリメラーゼはAmpliTaq DNA polymerase FSを用いたサイクルシークエンス反応を行うことにより少量のDNA鋳型を用いることができる。検出には4色の蛍光(A:dR6G, C:dROX, G:dR110, T:dTAMRA)を用いることにより、それぞれの反応を分ける必要がなく、1本のチューブ内で反応を行うことができる。
また、蛍光の強度をあげるためにFluroresceinのドナー色素にdichlororhodamin(dRhodamin)の受容色素を組み合わせている。これにより従来の蛍光の2-3倍の強度を得ることができる。このキットではサイクルシークエンスとこの強度の強い蛍光を用いることにより、plasmidで50-100ng、PCR産物で5-50ngと微量のDNA鋳型で塩基配列の決定が可能になっている。

 

操作

1. 下記の量を0.2mlチューブの中に入れる

 

Terminator Ready Mix4μl8μl
Template(PCR産物5-50ng)xμlxμl
Primer(1.6pmol/μl)2μl4μl
DDWyμlyμl
 
Total10μl20μl

 

2. 下記の条件で反応させる。


サーマルサイクラーの条件
 
95℃10sec(30sec)
50℃10sec(15sec)
60℃2min30sec/40cycles


3. 反応物の精製

シークエンス後は、反応液中に残った余分の蛍光物質を取り除く必要がある。エタノール沈殿でも、ある程度はこの蛍光物質を除くことが可能であるが、不十分な場合が多い。以下の(A),(B)のようなカラムを用いる方法がより確実に余分な蛍光物質を除くことができる。

 

  • (A) MultiScreen Dye Terminator Removal Kit(Millipore社)での方法

比較的大量のシークエンス反応サンプルを処理するのに向いている。


準備
  • マルチスクリーンHV プレート
  • カラムローダー
  • 遠心用アダプター
  • セファデックスG50スーパーファイン(またはファイン)
  • 3100用サンプルトレイ
  • 廃液回収プレート(利用済みサンプルトレイでOK)
  • HiDi Formamide(ABI)

ミニカラムの作成
  1. カラムローダーを用いてセファデックスG50をマルチスクリーンHVプレートに入れる。
  2. 使用する3時間より前(または前日)に使う数のウエルに、滅菌蒸留水を300μlを添加し、セファデックスG50を膨潤させる。(膨潤させたセファデックスG50はパラフィルムでプレートをしっかり密封し、4℃で2週間以上保存が可能)

操作

※遠心は1100g (910×g以上) (BECKMAN CS-6KR低速遠心機 2250-2500 rpm)で行う。

1. 廃液回収プレート上にアダプターを置き、その上にマルチスクリーンHVプレートを重ね2,500rpm(=1100 g)で5分間遠心する(ミニカラムの脱水)

2. シークエンス反応物を各ウエルの中央付近に添加する(カラムに直接触れカラムを乱さないように)

3. このHVプレートを3100用サンプルトレイの上に重ね、2,500rpm(=1100 g)で5分間遠心する。

4. ろ液を直接シークエンスに用いる(または乾燥させ、HiDi formamide 20μlに溶解してシークエンスに用いる)

 

  • (B) DyeEx Spinカラムを利用する
    操作
    1. 遠心は750× gで行う。
    2. カラムを軽くVortexにかけ、ゲルを撹拌する。
    3. カラムのキャップを1/4まわしてゆるめる。
    4. カラムの下側の栓を折って切り、2mlチューブの上にカラムをのせる。
    5. 3000rpm (=750× g),3min遠心(室温)
    6. 新しい1.5mlチューブにカラムを移し、Sequencing reaction(10~20μl)をゆっくりとゲルにのせる。(カラム壁やゲルへチップを当ててはいけない。ゆっくりとサンプルがしみこむよう滴下する。流れて壁についてはいけない。より操作しやすくするためには、10μl以下では操作しにくいため、滅菌水を加えて20μlにするとよい。ミネラルオイルは除去しなくてよい。)
    7. 3000rpm,3min遠心(室温)(収量を上げるには、斜めになったゲルの一番高いところ(または低いところ)がローターの外側に向くようにするとよい。)
    8. カラムを取り除き0.5mlチューブにサンプルを移し、そのままサンプルトレイに移す(またはspeed vacで乾燥させ、HiDi formamide 20μlを加える)。

     

  • (C) エタノール沈澱で行う方法
    操作
    1. 滅菌蒸留水 10μlと100% Isopropanol 30μlを加え、Vortexで撹拌する。
    2. 室温で15min以上(~2hr)おく。
    3. 12000-15000rpm,15min遠心(室温)。
    4. 遠心直後に上清をピペットを用いて完全に捨てる。
    5. 70%エタノール 250μlを加え、軽く撹拌する。
    6. 12000-15000rpm,15min遠心(室温)。
    7. 上清をピペットを用いて完全に捨てる。Speed Vacで完全に乾燥させる(3-5min)。
    8. チューブに20μlのHiDi formamideを加える。

     

4. Genetic Analyzer 3100による電気泳動

この操作は通常、センターの職員が行う。

3100 Sequencing簡易操作ガイド(http://grc1.med.tottori-u.ac.jp/gakunai/sequence/seq1.html)参照

 

1. サンプルトレイに入ったサンプル( 20μl以上)をサーマルサイクラーで95℃、2min加熱し氷の上に置く。

2. ABI PRISM 3100 Genetic Analyzerのサンプルファイルを作成する。

3. サンプルトレイをABI PRISM 3100 Genetic Analyzer機器にセットして、電気泳動を開始する。

 

5. 塩基配列結果の検討

結果を装置付属のパソコンを用いて解析する。

3100 Sequencing簡易操作ガイド参照 

 

塩基配列表示のみの簡易ソフトがいくつかインターネット上で配布されている。

Chromas2(Windows用)他

 

複数の塩基配列を比較して解析を行いたい場合SeqScape software ver. 2.1.1を用いると効率的な解析が可能である。

SeqScape software training movie参照